2015年10月26日
覚悟を決めて
自分なりに努力をしてみたつもりだったが、うまくいかず、結梨は気力を失いつつあった。
(柳瀬さんに相談してみよう)
便箋とペンを手にした瞬間、結梨は新しい策を思いついた。
(そうよNeo skin lab 退款。手紙を書けばいいんだわ)
曇っていた気持ちがぱっと晴れ渡った。
驚くほどすらすらと筆は進んだ。伝えたいことはもう頭の中で充分に整理してあるからだ。娘に対して手紙を書くのは、小学校入学の時以来だった。卒業する頃には、恵梨奈に「できの良い子」であることしか望まなくなっていた。「おめでとう」と一言言っただけで、すぐに私立中学受験の話をした記憶がある囍宴大師。冷たい母親だったと思う。もちろん、今だからそう思える。
直接手紙を渡そうとしたところで受け取ってくれるはずはないため、夕食に添えておくことにした。恵梨奈には「夕食を持ってきた」とだけ伝えて、結梨はリビングへ戻った。
(恵梨奈はちゃんと読んでくれるかしら)
急に自信がなくなってきた言語治療師。手紙の内容を改めて思い返すと、もっと他に書き様があったのではないかという気がしてくる。今ならまだ手紙だけを抜き取って書き直すことができるかもしれない。いや、そのときに偶然、恵梨奈と顔を合わせることだって考えられる。それはそれでバツが悪い。覚悟を決めて、結果を待つしかない。
結梨は夕食にも手を付けず、何度も深呼吸を繰り返した。
Posted by cirirtomi at 17:25│Comments(0)
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